BOIは投資奨励申請が2023年も継続的に増加し、電気電子機器産業をはじめ、自動車および部品農業、農業・食品産業といったプロジェクトが2,307件に達し投資金額は8,400億バーツを超え、ここ5年で最高額であることを明らかにした。さらに、2024年には総額290億バーツ以上の大規模プロジェクトを認可し、年内に世界中から投資を呼び込むための5つの計画を開始する準備をしている。
投資委員会(BOI)長官のナリット・テートサティーラサック氏は、パーンプリー・パヒターヌコーンタイ王国副首相兼外務大臣が議長を務めた投資委員会の会議でプロジェクト件数および投資金額の両方において継続的に増加し前年を上回った2023年投資促進報告書を承認した。2023年には奨励申請プロジェクトが2,307件あり前年比16%増、投資金額は8,483.18億バーツで前年比43%増、過去5年で最高額となっている。様々な国の二極化状況により、大手企業の安定した準備が整っており、競争とならない新しい投資先を探している。タイは潜在能力を持ち優れたファンダメンタルズを備えた国であり、この地域における優れた投資先となるという条件を満たすことができる。また、タイ政府はタイへのより多くの投資を誘致するための、大規模な投資を受け入れるために国を開放する政策をとっており、タイ経済を新しい経済へと再構築を目指すBOIの5カ年戦略の下で様々な投資奨励措置の開始を発表したと明らかにした。
投資金額が最も高い上位5業種は、電気電子機器が 3,421.49億バーツ、続いて自動車および部品が822.82億バーツ、農業・食品が744.16億バーツ、石油化学・化学品が459.51億バーツ、そしてバイオテクノロジーが318.14億バーツである。電気電子機器への投資は大幅に拡大し、プロジェクト数は62%増加し、投資金額は前年比3.5倍増となっている。例をあげればスマート電気製品、電子部品、ハードディスクドライブ、ウェハーとプリント基板のテスト、並びに電子機器の心臓部で、電気自動車、通信、医療機器、スマート電気機器、デジタル、オートメーションなどの他の産業に展開できる基盤産業となるPCBおよびPCBAの20件以上の大規模プロジェクトのプリント基板の生産事業など生産への大規模投資を有するからである。自動車産業への投資については長安、イオン、フォトンといった中国の大手自動車メーカーが主導している。
海外直接投資(FDI)に関しては、奨励申請プロジェクトが1,394件あり38%増となり、投資金額は6,632.39億バーツ、72%増となっている。奨励申請金額が最も高い上位3カ国は、中国が 1,593.87 億バーツ、シンガポールが 1,233.85 億バーツ、米国が 839.54 億バーツである。日本は 791.51 億バーツで4 位であったが、前年比 60% の拡大率となっっている。
また、産業高度化措置(Smart and Sustainable Industry)に基づく奨励申請は2023年には奨励申請プロジェクトが437件あり、総投資金額は293.79億バーツとなっている。そのほとんどは省エネおよび代替エネルギー使用への投資であり、続いて生産ラインへの機械の入れ替え・自動化導入である。一方、中小企業の投資奨励申請は943件であり投資金額は360.1億バーツとなっている。
2023 年の投資奨励認可に関しては 2,383 件のプロジェクトがあり、総投資金額は 7,501.29 億バーツとなっている。それらのプロジェクトにより、タイ国の輸出額が年間約2兆4,400億バーツ増加し、国産原料が年間約1兆6700億バーツが使用され、約139,000人のタイ人の雇用が創出されると予想されている。奨励証書の発行について、実際の投資に最も近いステップであるこのステップも大幅に増加し、奨励証書発給は1,825件あり22%増、総投資金額は4,907.86億バーツで6%増となった。
さらに、BOIは以下のように総金額297.2億バーツの4つの大規模プロジェクトへの投資奨励を認可した。
1) オーストラリア最大のハイパースケール データセンターのサービス プロバイダーであるNEXTDC LTD. は、バンコクに立地する137.59億バーツ相当のデータセンタープロジェクトに投資した。最高標準の「ティア4」レベルを備えたデータセンターのサービスを提供し、最高レベルの安定性と信頼性を備えたデジタルインフラストラクチャを必要とするユーザーまたは組織、並びにEnterprise Cloudの形で国内外でサービスを提供するクラウドサービスプロバイダーをサポートする。
2) インド最大のハイパースケールデータセンターのサービスプロバイダーである CTRLS DATACENTRES (THAILAND) LTD. (CtrlS Datacenters) は、チョンブリ県デジタルパーク・タイランド (EECd) に立地する 50.44 億バーツ相当のデータセンター プロジェクトに投資した。最高標準の「ティア4」レベルを備えたデータセンターサービスを提供し、EEC エリアにある企業のニーズを満たすために高速データ配信と高速応答速度 (Low Latency) をサポートする。
3) Xingda Steel Cord (Thailand) Co., Ltd. は、自動車およびトラックのタイヤやラジアルタイヤタイプの強化に使用されるスチールコード、ビードワイヤー、スチールワイヤーなどの工業用鋼線を生産するプロジェクトに投資した。投資金額は66.61億であり、チョンブリー県ロジャナ工業団地に立地する。
4) TPI Polene Power Public Company Limited は、サラブリ県に立地する42.38 億バーツ相当の蒸気生産プロジェクトに投資した。本プロジェクトは、廃棄物固形燃料(RDF)を利用して蒸気を製造し、発電所やセメント製造工場に供給するものである。
「今度認可されるプロジェクトは重要な投資プロジェクトであり、タイの可能性に対する外国投資家の信頼を強化している。特にデジタル経済の発展に対し非常に重要な事業はオーストラリアおよびインドの 2 つの大規模データセンタープロジェクトである。自動車タイヤに使用される鋼線の生産プロジェクトは、自動車産業のサプライチェーンの強化に貢献する。廃棄物固形燃料を利用した蒸気生産プロジェクトについては、持続可能な開発ガイドラインに従って国内の廃棄物問題を減らすのに役立つ。」とナリット氏は述べた。
その上、BOIは5つの重要な分野での任務を重視し2024年の実施計画を設定した。
1)日本、中国、韓国、米国および欧州の対象国の投資家をターゲットに、BCG、電気自動車(EV)、エレクトロニクス、デジタル、地域統括会社の5つのターゲット産業への投資誘致を引き続き積極的に行う。今年は、BOIはサウジアラビアのリヤド、中国の成都、そしてシンガポールにさらに3つの事務所を開設する予定だ。いずれもタイへの投資誘致にとって重要な対象国である。2)投資誘致の能力を構築するためのビジネス環境の向上。例えばクリーンエネルギーから電力を調達する仕組みの促進、主要貿易相手国とのFTA交渉の支援、ターゲット産業に合わせた人材育成、政府サービスの向上など。 3)長期滞在ビザ(LTR Visa)制度を通じて、タイに滞在し働くために海外からの高度なスキルを持った人材(Talent)の誘致および、ビザ・ワークパーミット・サービス センター(OSS)の改善 4) 事業者特に中小企業に可能な限りサプライチェーンに参入するよう促進することにより、特にタイの大規模な産業クラスターとなりつつあるEVやプリント基板(PCB)などの新産業においてタイの事業者をターゲット産業のサプライチェーンに連携すること。5)事業者を競争力があり環境に優しい新時代の産業(Smart and Sustainable Industry)に格上げすること。例えば、省エネの機械への機械入れ替えの促進、代替エネルギー使用、または自動化・ロボット導入、あるいはデジタル技術の効率化など。
「BOIは2024年が投資のゴールデンイヤーとなり、特に自動車、エレクトロニクス、デジタル、バイオ産業、再生可能エネルギーなどのターゲット産業において投資を決定する大規模プロジェクトも継続的に増加すると見ている。自動車については、電池や主要部品の生産を含む新興EVメーカーからの投資を呼び込むほか、清潔さ、省エネ、安全性、インテリジェントな運転を目指した現代技術への移行をサポートするために新たに発表された自動車産業の高度化措置に基づく奨励申請に来る既存の自動車事業者による投資の拡大も期待される。」とナリット氏は述べた。