タイを含む国際社会があらゆる状況に対処するために適応しなければならない新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の流行状況をはじめ技術の急速な変化(Technology Disruption)、米中貿易戦争(Trade War)、地球温暖化(Global Warming)防止トレンドなど、挑戦すべく多くの障害があるため、今年の経済成長もまた困難な年になるだろう。しかしタイの投資面では、2021年の第1四半期(1月〜3月)のBOI投資奨励申請件数が昨年同期比で80%増で投資金額が1200億バーツを超えるという前向きな兆候が見られた。
産業別に見ると、医療産業および電気・電子機器産業が継続的に成長している。COVID-19流行状況の影響により医療製品の需要が増加し、在宅勤務により電気・電子機器が拡大したため、奨励申請件数が最も多い上位2つのターゲット産業となる。医療産業は投資金額が184.3億バーツで、前年同期比で100倍以上伸びた。電気・電子機器産業は投資金額が174.1億バーツで、前年同期比で64%増となった。
一方、破壊的な技術移行がデジタル事業の成長につながる原因の一つである。奨励申請金額が 8.3億バーツで前年同期比でほぼ2倍増加した。オートメーション・ロボット産業に関しては投資金額がまだ高くないが前年同期比でほぼ30倍大幅に増加した。
また、生産効率向上措置に基づく投資奨励申請に関しては特に省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための生産効率向上措置において大幅に増加している。その方向性は、地球温暖化防止トレンドに対応するための投資と一致していることがわかる。奨励申請プロジェクトが21件あり、投資金額が56.3億バーツで昨年の第1四半期と比較して約5倍増加した。
この傾向は、常に発生する変化トレンドに対応するための事業者の適応の方向性を反映した指標である。投資委員会(BOI)も投資奨励において柔軟性とスピードを高め、タイのIT人材の育成を推進するためにデジタル産業等において投資奨励措置を改定した。それに、貿易戦争の状況により中国から生産拠点を移転する可能性のある投資誘致を加速し代わりにタイに投資するようにすることを目的として高度な技術とイノベーションの使用を促し海外からの電子材料の依存を減らすためにウェハーセグメントにおいて電子のアップストリーム産業を推進した。また、スマートパッケージング(Smart
Packaging)における新しい業種への奨励を開始した。消費者のニーズに応えるために技術を発展させることに加えてバランスと持続可能性を実現する投資奨励であるBCGコンセプトにも沿っている。
したがって、高度な技術とイノベーションへの投資を加速するための対策を講じる準備をすることや、柔軟性とスピードを高め投資家に対し手続きにおいて便宜を図ることは、国の競争力の維持に大きくつながり、絶えず挑戦する変化に対処するためにタイ事業者に準備を整えさせるものとする。