BOI はEV産業を世界の重要な自動車生産拠点として維持するためにEV産業を促進する理由を説明し、輸入品の1~3倍を補う生産投資をし国内で生産した重要部品を使用する必要があり、促進しないと競合他社に機会を奪われる可能性がありタイがただの輸入国となるという重要な条件を指摘した。現代産業への移行に向けて 5つの重要な措置により自動車および部品産業を支援する準備ができていることを強調した。
投資委員会(BOI)長官のナリット・テートサティーラサック氏は、電気自動車(EV)産業への投資奨励措置について自動車生産ハブとしてのタイの地位に影響を与えたという疑問が生じたことを受け、BOI は国家電気自動車委員会(EV委員会)の事務員として、以下のとおり事実を説明すると明らかにした。
1. 電気自動車産業を促進する理由 温室効果ガスの排出によりさらに深刻化する傾向がある気候変動の危機、そして運輸部門が温室効果ガスの最大の排出源の一つであるため、世界の方向性は二酸化炭素(CO2)排出量が少ないクリーンテクノロジーを使用した自動車の使用を目指している。多くの国が内燃機関(ICE)を搭載した自動車の輸入禁止や、CO2排出量の多い自動車の輸入を規制するための増税の措置を講じる準備を進めている。 一方、タイの自動車産業は依然として主にICE車を生産している。
また、現行の自由貿易協定の枠組みでは、電気自動車を一部の国から輸入してタイで販売するのには輸入関税を支払わなくても良い。何も措置が講じられなければ、生産拠点を設けずに、国内で販売するために大量の電気自動車が輸入される傾向が高い。したがって、タイは何のメリットも受けられず、競合国にEV産業への投資を呼び込む機会を失い、かつバッテリー、モーター、自動車用電子部品、車両アクセス制御システムなどの新技術による成長機会を失う可能性がある。それにより、タイの自動車産業は長期的な競争力を失い、タイに将来的にカーボンニュートラルを達成する上で重要なツールとなるEVの生産拠点が不足することになる。
したがって、タイの自動車産業が競争力を持ち世界の方向性と一致するようにし、長期的にASEAN第1位および世界トップの自動車生産拠点としての地位を維持することができるようにするために、政府は、環境に優しい次世代自動車の生産拠点を促進する必要があると考えている。そこで、EV産業の開発の方向性を検討・決定するために2020年から国家電気自動車政策委員会が設置され、タイの自動車産業が環境に優しい自動車の生産への移行を開始する指標として30@30という目標を設定しゼロエミッション車(Zero Emission Vehicle)の生産を少なくとも2030 年の自動車総生産の 30%を目指している。
その目標を達成するには、政府は、すべての種類の自動車産業におけるリーダーシップを長期的に維持し拡大し、一部の国からの輸入品に関税障壁を設けている欧州や米国へのEV輸出の生産拠点となるチャンスをつかむをつかむために、自動車産業の既存の強みをさらに強化しICE、HEV、PHEV、BEVを含む一貫した自動車および部品の生産拠点になるために、EV産業への奨励措置を講じた。タイのEV産業への奨励措置は、既存の投資家および新規の投資家の両方にタイ人も外国人もどこの国にでも開かれている。過去には、タイのメーカーをはじめ、中国、日本、ヨーロッパ、そして最近では韓国など多くの国からの自動車、オートバイ、トラック、バスを製造するEVメーカーがこの措置に参加した。
2. 物品税局によるEV3およびEV3.5措置に基づく電気自動車産業に補助金を与えるする理由 この措置は、30@30目標に基づく自動車産業のEVへの移行を促進し、タイをこの地域の主要な生産拠点に押し上げることを目的としており、自動車メーカーが投資先を決定する際に使用する重要な要素である国内EV自動車市場を投資に適した規模に創出する。
EV3およびEV3.5措置では、最初の2年間に輸入が認められ、生産拠点設立への投資に関連した条件が定められている。この措置に参加する企業は、期間に応じて少なくとも1~3倍の輸入を補うためにタイでEV車を生産しなければならない。また、国内で生産された重要部品を使用するという条件も定められており、タイを統合電気自動車および部品の生産・輸出拠点として推進することになる。
3. 今年の自動車販売台数が大幅に減少した理由 2024年上半期の国内自動車販売台数が24%減少し、特にピックアップトラックが40%減少した。一方、タイで販売されているBEV電気自動車の販売台数が自動車総販売台数の約10%となっている。主な原因は電気自動車の置き換えではないことがわかる。しかし、タイの自動車販売台数が大幅に減少した主な要因であり、かつ自動車部品グループに影響を与えることが現在の経済問題、消費の減速、高額な家計債務、自動車ローン審査の厳格なところ。しかし、政府部門は事業者と協議し、移行期間中の自動車メーカーや部品メーカーを支援するためのいくつかの措置を講じた。
4. 内燃機関車および部品のメーカーに対する支援および配慮 政府の重要な目標は、完全に統合された自動車部品を含む、ICE、HEV、PHEV、BEV などすべての種類の自動車の生産および輸出の中心地となるようタイを推進することである。 30@30 という目標から見ると、残りの 70% が依然として内燃機関車の生産であることがわかるが、クリーン、省エネ、安全性、インテリジェント運転に向けて技術を開発しなければならない。また、首相はタイ経済に対する内燃機関車メーカーの重要性および、次世代自動車生産への移行を支援する準備ができていることを強調した。自動車および部品のメーカーを支援するために、以下の 5 つの措置を講じた。
1) 自動車産業の高度化のための投資奨励措置 (2023 年 12 月 12 日付投資委員会布告第 2/2566 号)、自動車メーカーに対しICE、HEV、PHEVなどの自動車生産の生産効率向上のために自動化またはロボットの導入への追加投資を促進することを目的としている。現在、日本と米国の自動車メーカー4社が奨励に申請している。
2)自動車部品産業の高度化のための投資奨励措置 (2024 年 6 月 28 日付投資委員会布告第 11/2567 号)、タイ国内の部品メーカーに対し、競争できるあるいはEV部品、エレクトロニクス、航空、医療機器、機械設備などの新たな産業への事業を拡大できるように、生産効率向上または標準の高度化のために機械入れ替え、人材育成、または現代技術の使用を促進することを目的としている。
3) 自動車部品製造におけるタイ企業と外国企業との合弁事業への奨励措置 (2024 年 8 月 7 日にBOI 会議で可決)、タイの自動車部品メーカーに対し、投資する外国企業との合弁事業の機会を得るよう支援することを目的としている。タイ法人は30%以上の株式を保有しなければならない。これにより、ビジネスチャンスが創出され、変化に対応し次世代自動車のニーズを満たすことができるようにタイの事業者が自動車部品の製造技術を高度化するよう支援することにつながる。
4) ハイブリッド車向けの物品税引き下げ措置 (2024 年 7 月 26 日に EV 委員会で可決)、ICE 車からより環境に優しい自動車への移行を支援することを目的としている。また HEV はタイが世界の生産拠点となる可能性があるもう 1 つのセグメントである。この措置には 二酸化炭素排出量の削減、追加投資、国内製造の重要部品の使用、そして自動車安全システムの設置という4 つの重要な条件がある。
5)国内製造部品の使用への奨励措置 物品税局は、EV3およびEV3.5措置の対象となる自動車メーカーに対し、国内で生産されたバッテリー、またはトラクションモーター、BMSシステム、DCU、インバーター、減速ギア、空調用コンプレッサーなどの重要部品を使用することを条件としている。一方、関税局および工業省は、フリーゾーンあるいは自由貿易地域に立地するEV自動車メーカーが品質検査や重要部品の製造などの重要な生産プロセスを通過し、かつタイおよびASEANで生産された部品および原材料をエクスワークス(EXW)の40%以上で使用することを条件としている。
BOIに関しては、奨励を受けるEV自動車メーカーが国内メーカーからバッテリーおよび重要部品を生産または調達し、技術研修や技術支援を通じてタイ人が株式の過半数を保有する国内の部品メーカー(Local Supplier)を育成する計画を有するという条件を定めた。これにより、タイの部品メーカーがEV産業向けの部品メーカーに移行するためにEV関連技術を学び開発する機会を得ることができ、レベルアップにつながる
また、BOI はタイ事業者がEV産業のサプライチェーンでできるだけ活躍できるように、ビジネスマッチングや商談のプラットフォームを構築し、部品取引、製造委託またはタイ企業と外国企業との合弁事業を行うよう促進するため、国内部品調達活動(Sourcing Event)および裾野産業展示会(Subcon Thailand)の開催にも力を入れている。